[今成 鈿女の山車]
辻には、四方より人が流れ込み、溢れる熱気の渦で、もう何処にも行き場がありません。
観客を沸かせては、踊り続ける「天孤(てんこ)」と「ひょっとこ」ですが、なぜかひとつ、気のせいでしょうか、落ち着きが足りぬように思えます。
それもそのはず、二人の視線をたどるなら、画面には現れてはおりませんが、そこにはなんと、派手な着物に身を包む、思わせぶりな笑顔で踊る「おかめ」がいたのです。
それなら、仕方がありません。納得です。
一方、なにか、不都合でもあったのでしょうか。互いに山車(だし)を、寄せすぎたのかも知れません。
唐破風(からはふ)の屋根の上では職方(しょっかた)が、なにやら真剣な顔つきで、鋭い口調の会話を交わしています。
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