[ 川越藩火縄銃鉄砲隊の演武 ]
川越藩火縄銃鉄砲隊(かわごえはんひなわじゅうてっぽうたい)の演武(えんぶ)がいよいよ始まります。怒声とまごうばかりの指揮官(しきかん)の迫力にあふれた号令(ごうれい)が、会場の隅々にまで行き渡り、緊張の糸は一気に張りつめ、観客の誰もが固唾をのみ、鉄砲隊が演じる演武の一挙手一投足を見守ります。
「玉込めぃっ!(たまこめぃっ)」
射手たちは、腰に付けた火薬箱から取り出した火薬を、筒先から詰め込み、筒の中の火薬を圧縮するといった、一連の動作に入ります。
「火縄を付けぃっ!(ひなわをつけぃっ)」
火縄を火挟みに装着し、指揮官の次の指示に備えます。一糸乱れぬ鉄砲隊の、流れるような動作に訓練の厳しさが伺えます。
「構えぃっ!(かまえぃっ)」
火縄銃の筒先を斜め上方の、蔵造りの町の天に向けて構え、射手たちは射撃のタイミングを伺います。
ここで、隊列の直前を横切る、不届きな観客が一人でも居ようものなら、間髪を容れず、「無礼者ぉ〜 横切るなぁ〜!」の怒号が指揮官より容赦なく浴びせられ、観客の安全の確保が十分になされるまでは、頑なに演武は無情にも中断されてしまうのです。
「火ぶたを切れぃっ!(ひぶたをきれぃっ)」
火皿を覆う火ぶたを開け、火挟みにはさんだ火縄が火皿に着火する寸前までの所作、いわゆる射撃の寸前といった動作に入ります。射手たちの指先は引き金にかかります。
「放てぃっ!(はなてぃっ)」
今かとばかりに、射撃を待ちかねた射手たちは、おもむろに引き金を絞り、あたりに轟音をとどろかせ、演武の一連の作業を、指揮官の指示に従いつつがなく進めるのです。
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